企業の情報流通のベースとなる帳票。システム開発を行う際、その工程の2/5が帳票であると言われる。日本におけるあらゆる業務は「帳票」を元に動いていると言っても過言ではないだろう。企業が抱える膨大な情報を効率よく流通させ、活用するための仕組みとして、帳票システムは重要な役割を果たす大きな鍵となる。ここでは、まず帳票の種類や役割、ニーズなど、帳票に関する基本的な知識について確認する。
帳票とは?
帳票の種類と役割
「帳票」は伝票類や申請書類などの総称である。企業活動の最も根幹を支えるデータの一つとして業務に密着している帳票は、基本的にルーティーンワークから出力され、エンドユーザーにとっても馴染み深いものである。この身近な帳票を上手く活用していくことは、企業活動を活性化していく上で、非常に大きな意義を持っている。
企業において運用される帳票は、例えば下図のように分類することができる。図の左右の軸は、勘定系帳簿(業務帳簿)であるか情報系帳簿(管理分析帳簿)であるかの分類、そして上下の軸は社外向けの帳票であるか社内向けの帳票であるかの分類になる。
また、企業活動全体で、実際の業務においてどれだけの帳票が用いられているのか、代表的な日本企業の組織形態を例にとって考えてみる。
本社を中心として、支社・営業所、資材、製造、出荷、取引先、銀行、コンビニ、配送センターなどがあるとき、これらの各所での業務プロセスに加えて、基幹業務の製造・販売管理、会計、人事等で帳票や伝票が必要とされる。
例えば、取引先と支店・営業所の間では発注書。支店・営業所と資材購買部門との間では発注書、仕入伝票、在庫管理表。製造部門の関連では、製造指図書、出荷票、検品票。そして一般的な会計伝票だけでも、支払通知書、仕切書、請求書、領収書など十数種類にのぼり、また人事関係の法定伝票も、源泉徴収票、給与支払明細書、扶養控除申請書など十種類以上が挙げられる。さらに物流の現場では、ピッキングリストや出荷伝票、納品書、物流ラベルなどもある。このように、企業を取り巻いて必要とされる帳票類は、非常に多く多種多様である。
定型帳票と非定型帳票
帳票はまた、定型帳票と非定型帳票に分類することができる。定型帳票とは、あらかじめ出力要件の定まった書式の帳票であり、それに対して非定型帳票とは、任意に出力データを設定する帳票のことである。営業、購買、業務管理などで、意思決定のために必要とされる報告書、集計表などの集計レポートが非定型帳票にあたる。
このような実務で必要とされるレポーティングのシステムは、現場のエンドユーザーの環境において十分活用されなければならない。それは、作業管理や指示出しの判断材料にしたり、顧客に具体的な説明をする際の資料作りのために使うものとなる。そのようなレポーティングシステムは、企業の各拠点、各部門における要件によって適した構築が必要となる。
帳票システムの実際
システム全体での帳票の比重
企業で必要とされる帳票の数と種類は非常に多く、業種・業態を問わず、ほとんどの企業において100種類を超える帳票が流通し、大手企業に至っては必要とされる帳票数は一般に数百から数千にのぼると言われている。
その様式の多様さと出力形態、そして取引先の数だけ、システム開発者は要件を把握しなくてはならず、システム開発の現場において帳票に関する工程の比重は非常に大きい。1からプログラム開発を行っていた時代、帳票発行に関する部分に、システム開発全体の約4割のコストがかかることもあったと言われる。
システム設計時に「帳票」という項目を組み込む
帳票システム開発を支援する今日の帳票ツールは、洗練された業務アプリケーションと現場の多様な実務を結びつけるのに、重要な役割を担っている。そのため、Webアプリケーションなどを基盤とするシステムの「短期開発」を実現するために、比重の大きい帳票発行部分を、設計の段階からテーマとして取り上げる必要がある。
逆に、帳票発行システム全体の高い生産性、すなわち開発の工数削減と、拡張性のある帳票システムを開発できるかどうかが、システム開発の重要なカギとなる。開発の短期化、開発パフォーマンスの向上という視点から見ても、ソフトウェアのコンポーネント化と実装の最適化をはかるモデルとして、帳票ツールの存在は参考になるはずである。システム開発コストを少しでも削減したいと考える経営者にとっては、帳票発行システムは注目に値するだろう。
帳票システム開発にかかる時間とコストの要因
日本企業では帳票が業務プロセスの中核に位置づけられると言ってもよいほど、出力する帳票の要求レベルがきわめて高いといわれる。業務プロセスの根底にあるだけに、その実態が伝わり難く、結果としてその多くが追加案件となってしまうケースが少なくない。システム開発コスト高の要因として、次のことが挙げられる。
多種多様な帳票様式と出力形態
前述のように、企業で必要とする帳票の数が非常に多いということに加え、利用する部門によって書式が不統一で、体系だった利用ができないことなども、コスト高の大きな要因となる。そして、一元化へ向かう企業システムの潮流のなかで、そのような多種多様な書式への柔軟な対応が要求されている。また、運用形態の変化が激しく、現場でのカスタマイズ性を持たせておく必要もあるだろう。
出力形態が多種多様であることも、要因の一つとして考えられる。カット紙で対応できる、連続帳票用紙でなければ対応できない、プレ印刷した指定帳票用紙でなければならない、など様々な配慮が要求される。
一票に対する帳票様式のデザイン設計
日本には固有の帳票様式の文化があり、繊細な設計が必要とされている。プログラムを組み、出力しては調整するというプロセスを繰り返して、一票のフォーマットを開発するのに5日も時間がかかったというケースもあるという。また、データ整理やプリンタの選定に多くの試行錯誤が強いられることもある。
現場にあったフォーマットでの設計が必要となることもある。例えば、製造ラインにおいて、「ある作業員は、作業指示書の右上の欄だけを見れば済み、別の作業員は、左上の欄だけを見ればよい」「出荷時には、積まれた出荷製品に帳票を貼り出し、複数の作業員が確認して作業を手配できるように、離れた所からでも識別可能な文字サイズにする」などというように、現場の生産性を阻害しないレイアウトの工夫を要求されることもある。
システムの変化、帳票技術の拡張
企業システムがJ2EEを始めとするエンタープライズ環境の構築へと進路を取るなかで、多様性と繊細さを持つ帳票発行を企業システムとどう融合させればよいのか、という課題がある。その他、以下のような課題を挙げることができる。
課題
・Webアプリケーションサーバと連携した帳票運用
・OSやプラットフォームに制約されないプリントサーバの構築
・上流の開発設計ツールとのデータ連携
・ERPツール、B2Bサーバなど、周辺ソフトウェア、ハードウェアとのコラボレーション。
<帳票システム開発のキーワード>
・Web環境における運用
・オープン化
・モジュール化
<帳票システム開発に求められること>
・「短期構築」と「コスト圧縮」
・「システム設計の効率化」と「実装の最適化」
・個々の実務レベルに分散した情報・処理能力の有機的な結びつき。





